~ビルの谷間のオアシス~
<建築家>安藤忠雄
朝日新聞社岡山総局は、1階は駐車場、2・3階は執務室として利用されています。打ち放しコンクリートの壁や磨りガラスのカーテンウォール、屋上の片持ちスラブの庇はそれぞれ対等に主張し、水平線と垂直線を際立たせた安藤忠雄作品特有の緊張感あふれる作品となっています。
全体の各部分も長さ、厚み、サッシ、空間の取り方まで美しいプロポーションになっています。さまざまな材料を用いてバランスよく全体をまとまっている一方、それぞれの材料の個性も引き出して表現されています。また道路に面して立てられた壁と事務所側との間に階段を作り、事務所へのアプローチがとられています。アプローチに壁があることにより喧騒を遮り、上部の大きな開口と下部の壁に設けられたスリット等の開口により光を取り入れています。静かな空間と光と影のバランスは美術館を思わせます。さらに屋上庭園は庇や壁を設けないことで光や風をほどよく取り入れています。執務空間においては南側に大きく設けられた吹き抜けと屋上庭園の組み合わせにより、落ち着いた執務空間を実現しています。まさに街中の喧騒から少し離れた「ビルの谷間のオアシス」と言える空間になっています。
JR岡山駅からも近く、周辺には岡山を代表する近現代建築が多数あり、足がかりとして訪れやすい建築物です。