~日本のコンバージョン建築の先駆け~
<建築家>浦辺鎮太郎
倉敷アイビースクエアは、江戸幕府の代官所跡に建築された倉敷紡績(現クラボウ)の旧工場が、倉敷出身の建築家、浦辺鎮太郎氏の設計により、ホテルを中心とした複合文化施設として改修されたものです。近年、多く見られる工場や倉庫建築のコンバージョン(転用)、保存改修の日本での先駆けと言える建物です。
もとの工場は赤レンガの平家建てが敷地一杯に連立する建物群でしたが、一部の棟を間引くことにより、広場や通路などの空間を生み出して平面計画がなされています。解体部分は4000㎡に及びましたが、各材料は部材ごとに分別され、可能なものは再利用されました。
解体された工場の床にあった機械基礎の石は、そのままの形状で広場にしかれたり、柱があった位置にはその基礎石が置かれており、それらの間に在来のレンガと瓦を敷き詰めるなど、ふんだんに活用されています。これらは、単に解体した材料の状態が良かったことだけでなく、職人達の目利き、技術力による部分も大きいそうです。
北西部分の建物(アイビー学館)は展示スペースとして再利用されています。また、工場時代に温度管理のために植えられた蔦は、アイビースクエアの象徴であるとともに名前の由来にもなっています。