~島全体が美術館~
<建築家>妹島和世
犬島「家プロジェクト」は、アーティスティックディレクター・長谷川祐子氏、建築家・妹島和世氏による犬島の集落で展開されるアートプロジェクトです。
島に点在する「F邸」「S邸」「A邸」「C邸」「I邸」「中の谷東屋」の6点は妹島氏により設計されています。妹島氏は、犬島で「既存の風景とアートと犬島の人びとの生活と混じり合いながら現れる、新しい環境のようなものをつくりたい」と語っており、その意図を強く感じる建築物群です。
「F邸」「C邸」「I邸」は、木造瓦屋根の外観で、島の既存の集落の風景に溶け込むように建築されいいます。これらの躯体に使用されている部材は、空き家を解体して出た廃材に新材を追加したものだそうです。「S邸」「A邸」は透明なアクリルでできた展示スペースで、中の展示物をとおして隣家の建物やそこで行われる生活風景、周辺の山や木々と一体となった風景が広がり、これらを含めて一つの作品としてできあがっています。
それぞれの建築物は作品を展示するスペースとしてのみならず、作品を引き立てる要素としても機能しています。展示作品自体も見応えのあるものばかりですが、妹島氏の建築物群が作り出す新しい島の風景も見応えのある芸術作品となり、島全体が大きな美術館のようになっています。