~動く素材を活かした銅製錬所の再生~
<建築家>三分一博志
犬島精錬所美術館は、犬島の銅の製錬所跡地に建築家・三分一博志氏の設計により建築された美術館です。三分一氏は風や水、太陽などの”動く素材”と一緒に建築をつくる建築家と言われており、犬島精錬所美術館ではこの”動く素材”を至る所で感じることができます。
この建物には空調設備が無く、既存の煙突や内部に設けられたホールなどを利用して空気の流れを作ることで空調を行っています。採光も一部展示のためのものを除き、ほとんど自然採光です。晴れの日は明るく、曇りや雨の日は暗くなります。その他にも植栽を利用した廃水の浄化システムなど、自然エネルギーを使用した仕掛が設けられており、機械設備がほとんど無いため、周囲はとても静かで、自然の音だけが聞こえます。美術館では、三島由紀夫をモチーフとした、柳幸典氏の作品を体験、鑑賞できます。
また、周囲には1909年(明治42年)に開業し、わずか10年で操業を終えた銅の製錬所の大規模な遺構が広がっており、日本の産業発展の土台となった近代遺産にも触れることができます。
瀬戸内で生まれ、瀬戸内で活動してきて、この地域を熟知している三分一氏らしく、瀬戸内の気候と地形をうまく活かし、さらに、犬島独自の歴史や文化まで考慮した、犬島でしか成し得ない建築物を完成させています。