~陣屋跡の石垣の中に佇む打ち放しコンクリートの美術館~
<建築家>安藤忠雄
山の緑を背に、成羽陣屋跡の石垣に囲まれて、コンクリートの建物が静かに佇んでいます。成羽町出身の画家である児島虎次郎の作品と化石のコレクションを展示するためにつくられた高梁市成羽美術館。現在の建物は3代目にあたり、安藤忠雄氏の設計により建設されました。館周囲には人工池の「流水の庭」があり、その池の上を渡っていくように長いアプローチが配されています。アプローチが導く2階のエントランスは、山側である建物の裏手に設けられており、入館するにはぐるりと美術館の周囲をまわっていくことになります。この間に入館者は山の緑と館自体の美しさを味わうことができます。
安藤氏は「緑の斜面は、春には花を咲かせ、秋には紅葉する。池は、その様子と共に、人びとや建物の姿を映し込み、それらを束ねていく。人々が四季を通してここに集うことで、美術館が美術館を超え、この地域社会の核として成長していくことを望んでいる。」と述べています。静的なコンクリートの壁で造られた美術館は、高梁市指定史跡である成羽陣屋跡の石垣の歴史と、奥深い高梁の山の緑をより際立たせ、人の歴史と自然を調和させています。