~建築当時の姿のまま現在も学生を見守り続けている~
<建築家>アントニン・レーモンド
ノートルダムホール本館及び東棟は、チェコ生まれの建築家アントニン・レーモンド(1888-1976)の設計によって、清心高等女学校の校舎として建築され、国の登録有形文化財として指定されています。
当時はまだ珍しかった鉄筋コンクリート造で、教室や廊下は採光が多く取られており、明るく開放的なモダニズム建築です。学舎は庇で水平ラインを強調し、棟ごとに縦長や格子状の開口部を配して、統一性を執りながら、それぞれ表情が異なる外観を作り出しています。また、東棟の中央部に設けた聖堂のファサードには、壁一面の格子窓に色とりどりのステンドグラスがはめ込まれ、女学校ならではの軽やかさが感じられます。このような、水平ラインや開口部の配置による意匠デザインは、日本の伝統建築の水平性や建具の割付等をモチーフにしたものとも考えられ、レーモンドがコルビュジエやライトら世界的な建築家を意識しながら昇華させた日本のモダニズムの一端が感じられます。
聖堂内部は、中世からのカトリック教会における聖堂設計の原則に沿った厳粛な配置の中にも、ステンドグラスがはめ込まれた開口部が数多く設置され、明るく開放的で、来るものを拒まないような優しい空間になっています。ステンドグラスはパステル調の淡い色調でまとめられており、ここでも外観と同様にどことなく和を意識しているように感じられます。
これらの建物は、現在まで一貫して教育施設として使われており、構造躯体だけでなく、スチールサッシやガラス、ドアノブなども当時のままです。学生からも職員からも愛され、大切に維持管理されてきたことがわかります。建築自体の素晴らしさだけでなく、建物に価値を見出す人々に連綿と引き継がれていくことで、近代建築遺産としての価値が生まれていることを気付かせてくれる建築物です。