~映画のロケ地になった空中に浮かぶクラブハウス~
<建築家>石井和紘
牛窓ヨットハーバークラブハウスは、日本のエーゲ海と呼ばれる瀬戸内市牛窓に建てられた、空中に浮くヨットの形をした全長54mの建築物です。設計者の石井和紘氏は、自身のヨットの経験から、海を見下ろしながら建つクラブハウスを構想し、敷地が限られているため、1階は開放するという条件の中で、吊り構造でクラブハウスを空中に浮かすことを考えました。35mものはね出しを数本の細いケーブルによって支えていると思うとなんとも不思議な建物ですが、港に浮かぶヨットに似たクラブハウスが空中に浮かぶ景観は、ヨットや瀬戸内のヨットハーバーの魅力を強くアピールしています。2017年2月公開の映画「君と100回目の恋」ではクライマックスのライブシーンのロケ地にもなりました。
正面の階段を上って建物内に入ると、ロビー、カフェへとつながっており、ロビーとカフェの間にある長い廊下を進むと、南に面したガラス張りの明るく、牛窓の海が一望出来るホールがあります。建物の周囲にあるデッキに出ると、牛窓の風を感じながらクルーザーヤードを見渡せます。螺旋階段を降りると有名なヨット競技者が訪れた際の写真や、各種イベントの案内チラシ、観光マップを配置したホールがあり、牛窓の魅力を伝えるスペースにもなっています。
同じく牛窓地区にある、旧牛窓国際交流ヴィラ(外国人旅行者のための宿泊施設)も石井氏の設計です。桁方向33mの円弧を描く細長い形状から、石井氏が「33メートル堂」と名付けていた建物は、今では牛窓の海を一望できるレストランとなっています。