~岡山市街地に現れたジグラート~
<建築家>岡田新一
岡山市立オリエント美術館は、学校法人岡山学園(当時の理事長:故安原真二郎氏)から、古代オリエントの美術品1947点が岡山市へ寄贈されたことを機に建設されました。
岡田新一氏は、設計中に中近東各地を旅し、バグダット北部のモスクの塔からデザインの手がかりを得ています。オリエントの古代から中世にかけての建築は、積むという行為によって作られています。壁を積み上げることで<空間>を作ること、内部に<塔>の空間を作ることは、設計において最も重要なコンセプトをなしています。面としての壁体をずらせて組み上げることで内部に複雑な空間を組み合わせた結合空間を作り出し、非西欧的手法で「空間の漏れ」「光の注ぎ」を演出しています。壁をずらせ、遠のかせ、空間の奥にさらに空間を感知させる手法は、日本の伝統に根ざして存在する雁行(がんこう)配置や庭園と座敷の内外空間の貫流入と同じ類いのものです。
「ジグラート」とは、古代メソポタミアの聖塔のことですが、当美術館を企画段階から手がけて後に初代館長となった山本遺太郎氏がイメージモデルの写真を見た際に、山本氏から「これはジグラートですね」と指摘を受けたと岡田氏が振り返っています。
内部は、コンクリートのはつり仕上げの壁に、幾何学模様のはつり面が組み合わせられ、トップライトから注ぐ淡い光がやわらかく受け止められています。