~寺院建築の構造美を取り入れたモダニズム建築~
<建築家>川島甲士
かつて森蘭丸の弟、忠政が築いた津山城。その址地である鶴山公園のふもとに津山文化センターは建てられています。建物の周囲はかつての城下町の風情を残し、春には桜、夏には緑、秋には紅葉そして冬には雪と日本の四季を感じられます。鉄筋コンクリート造でありながら、その歴史ある風景と融和し、日本古来の建築物のような荘厳さを感じさせる津山文化センター。その外観を見てまず目をひくのは四周を取り巻く三重の「斗栱(ときょう)」。「斗(ます)」と「肘木(ひじき)」という部材から成る架構で、寺院などの日本の伝統的な木造建築の軒の荷重を支えてきた技術です。建築家の川島甲士氏は城址という立地の中で日本独自の架構である斗栱を象徴化し、現代的な材料と解析技術によって見事に復活させてみせました。こうして生まれた軒先に向かって持ち送られ、広がっていく架構は、迫力と美しさを兼ね備えており、まさに屋根を取り除いた日本の寺院建築の姿であり、城壁の石垣と対比が意識されています。
建物の構成は、約1000人を収容するホールを中心に置き、その周囲にホワイエ、回廊、会議室、管理部門を配し、展示ホールは別棟とした明快なプランです。ホワイエなどを彩る常滑焼(とこなめやき)の陶板を張りつめた壁は、津山出身の陶芸家・白石齊によるものです。その他にも、格子組の天井照明や湾曲しながら上る階段と手すりのデザイン等々、随所に見事な職人技も見出すことが出来ます。
津山文化センターは権威の象徴である天守閣に代わり、市民の総意でつくり上げられ、大切に使い続けられてきた「現代の城」とでもいうべき存在です。