~大正時代から現代へ 時とデザインをつなぐ~
<建築家>旧日本銀行岡山支店 長野宇平治、ルネスホール 佐藤正平
岡山市の中心市街地に位置する「旧日本銀行岡山支店」は、日本銀行技師長や日本建築士会(現日本建築家協会)の初代会長を務めた長野宇平治氏の設計により、大正11年(1922年)に建設されました。
その大きな特徴として、正面玄関に立つ重厚な4本のエンタシス柱、コリント様式の柱頭飾り、波状文様の外観など、古典主義様式の格調高いデザインが挙げられます。ほかに漆喰仕上げの天井、階段や回廊に取り付けられた手すりなど、内部にも高度な施工技術を見ることができます。
この優れた歴史的建造物を後世に継承し、芸術、文化の創造拠点「ルネスホール」として再生・活用するため、平成17年(2005年)に耐震補強を伴う改修・増築工事が行われました。
「新旧を並置した一義的図式は避けたかった。」設計者の佐藤正平氏は、その想いを新旧建物モジュールの統一による全体秩序の形成、改修・増築部分のデザインへの古典主義建築の要素の取り入れなどの手法により具現化しており、「新」「旧」の歴史的な繋がり、時間の連続性を随所に感じることができます。
この取組が評価され、平成24年(2012年)には日本建築学会賞(業績)を受賞。現在「ルネスホール」は県民に愛される文化交流施設のひとつとなっています。